日本鍼灸の起源、茨木。
鍼聖 茨木元行の伝説に触れ
鍼灸の奥深さを知る。

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茨木市は“鍼の聖地”
その歴史と文化を知り
鍼灸の魅力に目覚める。

戦国時代、
織田信長が上洛を果たした頃
茨木市には
鍼治療の名医として活躍した
茨木元行(いばらきげんぎょう)
という人物がいました。

彼は日本の鍼灸文化に
大きな足跡を残した人物で
私たち鍼灸師の先祖にあたります。

彼の著作や流派は今もなお
私たちに多くの知恵や技術を
伝えています。

茨木元行とその業績を知ることで
鍼灸治療の歴史や意義について
深く理解することができるでしょう。

茨木元行と鍼の聖地

鍼聖・茨木元行とは

茨木二介(にすけ)は、1568年頃に京都に近い摂津国上郡(現在の茨木市)に住んでいた鍼医です。室町時代まで当地を治めていた土豪・茨木氏の末裔で、武家の出自でした。針得という鍼の名人に師事し、鍼立て(鍼治専門医)となりました。肉筆本の針聞書で茨木元行と号しています。
彼はひとたび主君の命が下れば地侍として戦場に向かい、時には鍼師の元行先生として病苦を救って、また蟲師(むしし)としてハラノムシが引き起こす珍しい病態を観察し、先師から伝授された秘法で対処していた。というようなライフスタイルを過ごしていたと予想されます。

茨木元行は「今新流(きんしんりゅう)」という鍼を専門とする流派の開祖(家元)です。
今新流は現時点で判明している最も古い鍼術の流派で、元行の教育活動が端緒となって江戸時代に数々の流派が勃興しました。『今新流鍼法伝言』には、320箇条の鍼治療の原則や方法が記されており、古方流や曲直瀬流などの他の流派に対抗するために書かれたと考えられます。

今新流は北里柴三郎や橋本龍雲などの名医にも影響を与えました。
北里柴三郎は、幼少時に橋本龍雲の門下生となり、漢学や医学を学びました。橋本龍雲は、今新流の開祖・茨木元行の書いた『今新流鍼法伝言』を所蔵しており、奥書には今新流の相伝の経緯が記されています。

日本最古の鍼術書
歴史的な名著
針聞書とは

針聞書(はりききがき)は、茨木元行が1568年に刊行した鍼治療に関する口伝集です。人間の臓器や体内に棲息する虫(ハラノムシ)をユーモラスに描いた図鑑でもあります。この本は2002年に鍼灸師で森ノ宮医療大学院教授の長野仁氏によって発見されました。

針聞書は4部構成になっています。

❶ 針の基本的な打ち方、病気別の針の打ち方などを記した聞書
❷ 灸や針を体のどこに打つのか示した図
❸ 体の中にいる虫の図とその治療法(針灸や漢方薬)
❹ 臓器や体内の解剖図

針聞書の中でも特に注目されるのは、体の中にいる虫の図とその治療法です。虫とは、五積や六聚など病気を起こすと考えられた想像上の生き物で、人間の体内に住み着いて悪さをすると信じられていました。針聞書には、63種類の虫が描かれており、その特徴や治療法が記されています。虫の姿は、現実の動物や植物に似ていたり、全く奇妙な形をしていたりします。
これらの虫は、当時の人々の病気に対する考え方や想像力を示す貴重な資料です。

鍼の聖地と呼ばれる理由

茨木元行は、鍼術および灸術の発展に大きく貢献した人物です。
彼は、鍼術の原則や方法を320箇条にまとめた『今新流鍼法伝言』や、人間の臓器や体内に棲息する虫を描いた『針聞書』などを著しました。これらの著作は、近世から近代にかけて多くの鍼灸師に影響を与えました。また、彼は今新流という鍼術の流派を開き、門人を集めて教育しました。今新流は日本で最も古い鍼術の流派であり、その後の流派の源流となりました。
存亡の危機を乗り越え、現在にいたるまで、鍼術および灸術は国民の健康増進と疾病治癒に役立ち続けているのです。
茨木元行は、歴史を掘り起こせば私たち国家資格を有する十数万人の鍼灸師のルーツにたどり着く人物です。彼は「鍼聖」として讃えるべき偉人。そして彼が活躍した茨木地方は「鍼の聖地」と位置づけられます。

茨木市は日本鍼灸文化の発祥地です。茨木元行とその業績を誇りに思いましょう。茨木市鍼灸師会は、茨木元行の遺志を受け継ぎ、茨木市民皆さまの健康と幸せをサポートすることを使命としています。

茨木市では、元行の功績を顕彰するとともに、ハラノムシの魅力を広めるため、様々なイベントや講演を開催しています。

【2018年5月】
「ザ・ハラノムシ・ワールド」という芸能イベントを開催しました。
桂福丸師匠による落語「疝気の虫」、声優・神谷明氏によるトークショーなどが行われました。

【2018年11月】
日本伝統鍼灸学会の第46回・全国大会を茨木市で共催しました。
茨木の歴史やハラノムシの文化史に関する講演や、終活にまつわる講話、古武術のワークショップなどが行われました。

【2020年2月】
「早春ハラノムシまつり 鍼の聖地いばらきinOSAKA」というイベントを開催しました。
明治国際医療大学の矢野忠学長による特別講演「令和の鍼灸──新時代の可能性」や、桂福丸師匠による創作落語「光秀の鍼」などが行われました 。

これらのイベントや講演は「鍼の聖地」茨木市で開催された過去のものですが、今後も継続的に開催される予定です。茨木市民の皆様はもちろん、府民や国民の皆様にも、鍼灸の歴史や文化に触れていただき、鍼灸師会の活動やサービスに興味を持っていただけるように、努力してまいります。